Neil Young 全アルバム 2010年代

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はじめに 関連作品 ランキング


Colorado(コロラド) 2019年

7年ぶりのクレイジー・ホースとの新作。体調問題を抱えるフランク・ポンチョ・サンペドロ(Frank “Poncho” Sampedro)に代わり、ニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)が加わった。ロフグレンは「After The Gold Rush」など、サンペドロ加入以前のバンドに参加しており、ライブ盤「ROXY – Tonight’s The Night Live」でもその演奏を聴くことができる。

サンペドロの不在を感じる一方で、円熟味を増したニールとクレイジー・ホースの演奏がしみじみと沁みる。13分を超える”She Showed Me Love”や、”Shut It Down”など重厚で荒々しい曲の一方で、穏やかで美しい曲も多く、”Rainbow Of Colors”で歌われるストレートなメッセージも心に響く。同世代の同志としか生み出せない空気がここには確かにある。


Tuscaloosa(タスカルーサ) 2019年

1973年2月に米アラバマ州タスカルーサのアラバマ大学で行われた、ストレイ・ゲイターズ(Stray Gators)とのライブ・パフォーマンスを収録。

スティール・ギターのベン・キース(Ben Keith)、ピアノのジャック・ニッチェ(Jack Nitzsche)、ベースのティム・ドラモンド(Tim Drummond)、ドラムスのケニー・ベトレー(Kenny Buttrey)からなるストレイ・ゲイターズは、72年の「Harvest」に参加。73年のライヴ・アルバム「Time Fades Away」でも演奏を聴く事が出来るが、新曲のみだった「Time Fades Away」と異なり、当時のベスト的な曲目を楽しむことができる。

冒頭の2曲(”Here We Are in The Years”と”After The Gold Rush”)はニールのソロ。”Heart Of Gold”、”Time Fades Away”、”Alabama”、”Don’t Be Denied”など、いずれも充実の演奏で、ファン必聴のライブ盤。


Songs For Judy(ソングズ・フォー・ジュディ) 2018年

1976年11月の米国ツアーからの22曲。この年は春に来日公演があり、夏には2017年にやっと日の目を見たアルバム「Hithhiker」を録音するなど、ニールが非常に充実した活動をしていた時期で、名曲揃い、演奏も素晴らしいの一言に尽きる。

公式では未リリースの”No One Seems to Know”、1990年の「Ragged Glory」に収録された”White Line”のアコースティック版、”A Man Needs a Maid”の冒頭で”Like a Hurricane”のイントロが流れる場面など、聴きどころも多い。

ブートレッグでは、以前から「Joel Bernstein Tapes」などで広く親しまれてきた音源で、目新しさはないものの、公式の高音質でリリースされることは喜ばしい。


ROXY – Tonight’s The Night Live 2018年
(ロキシー:トゥナイツ・ザ・ナイト<今宵その夜>ライヴ )

1973年9月20~22日にウエスト・ハリウッドにあるロキシー・シアターで行われたライブ音源。シアターのオープニング記念として開かれたライブで、バックバンドのザ・サンタモニカ・フライヤーズ(The Santa Monica Flyers)は、クレイジー・ホースのリズム隊、ビリー・タルボットとラルフ・モリーナに、ベン・キース(Ben Keith)とニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)が加わったユニット。

72年11月のダニー・ウィットン(Danny Whitten)、翌73年6月のブルース・ベリー(Bruce Berry)の死を受けて作られた「Tonight’s The Night(今宵その夜)」のレコーディング直後のライブで、音楽と向き合うことで歩みを止めないニールの魂がこもった演奏に圧倒される。



Paradox(パラドックス) 2018年

ニールの新たなパートナー、ダリル・ハンナ(Daryl Hannah)が脚本と監督を手がけた映画のサウンドトラック。ニール・ヤング+プロミス・オブ・ザ・リアル名義の4作目。

サントラということもあって、一枚のアルバムとしては散漫な印象だが、”Cowgirl Jam”など、収録されている演奏・楽曲は充実しており、ファンにとっては聴き逃せない。


The Visitor(ザ・ヴィジター) 2017年

プロミス・オブ・ザ・リアルとの3作目。ニールらしいメロディーとリズムで構成された多彩な楽曲群で、やや生硬な印象もあったプロミス・オブ・ザ・リアルとの演奏も、クレイジー・ホースや旧知のミュージシャンとの録音と同じような味わいが出始めた。

リベラルの立場からアメリカへの愛を歌った1曲目の「Already Great」をはじめ、ストレートなメッセージが込められた楽曲の数々が、ニールが今を生きる現役のミュージシャンということを強く印象づける一枚となっている。


Hitchhiker(ヒッチハイカー) 2017年

1976年に録音された未発表アルバム。ニールとデイヴィッド・ブリッグスという多くの名盤を生み出したコンビで、幻の「Chrome Dreams」とともに、リリースされなかったのが不思議なほど充実した内容。

未発表曲は「Hawaii」と「Give Me Strength」の2曲。「Pocahontas」「Powederfinger」「Ride My Llama」など他の曲も、既存のアルバムに収録されたものとは違うバージョン。いずれもアコースティックで、より楽曲の魅力が際立つものとなっている。

「Le Noise」(2010年)に収録されたタイトル曲”Hitchhiker”の原曲が聴けるだけでも、ファンなら必聴の一枚。


Peace Trail(ピース・トレイル) 2016年

ジム・ケルトナー(Jim Keltner)、ポール・ブシュネル(Paul Bushnell)とのトリオ編成。アコースティックを基調としながら、ニールらしい緊張感のある曲も含まれている。

「The Monsanto Years」に続いて社会的なメッセージ色の強いアルバムで、石油パイプラインへの抗議が歌われている。やや地味な印象だが、ミニマルな構成で、ニールのサウンドが凝縮されたアルバムになっている。


Earth(アース) 2016年

プロミス・オブ・ザ・リアルとの2枚組ライブ盤。「The Monsanto Years」で歌われていた環境保護の精神を引き継ぎ、ライブ盤ではあるが曲の合間に様々な動物や虫たちの声が編集で挟まれ、タイトルに相応しい雄大なアルバムになっている。演奏は、個人的には、クレイジー・ホースとのライブ盤に比べてしまうと物足りなさもあるが、最後の「Love And Only Love」には圧倒される。


Bluenote Cafe(ブルーノート・カフェ) 2015年

「This Note’s For You」の前後、87〜88年のツアーからの2枚組ライブ盤。「Archieves Performance Series」のVol.11に位置付けられている。ホーン・セクションを含む生き生きとしたバンド演奏で、80年代のニールが決して迷走していたわけではないということがよく分かる。


The Monsanto Years(ザ・モンサント・イヤーズ) 2015年

ニールは若い頃から政治的、社会的なメッセージを臆すること無く歌ってきたミュージシャンだが、00年代以降、よりストレートに歌に思いを託すようになった。

今作に歌われているのは、遺伝子組み換え作物の普及を進める巨大企業モンサントに対する抗議メッセージ。2014年に米バーモント州が遺伝子組み換え作物(GMO)の表示を義務付ける法案を可決した際、モンサントとスターバックスが法的手段でこれを覆そうとしたことへの反発が制作のきっかけになったという。小規模農家を支援するファーム・エイド(Farm Aid)の取り組みを続けてきたニールにとっては、当然の行動かもしれない。

ウィリー・ネルソン(Willie Nelson)の息子、ルーカスとマイカ(Lukas & Micah Nelson)らのバンド、プロミス・オブ・ザ・リアル(Promise of the Real)を迎え、ニール自身も若い世代との共演を楽しんだのだろう。過激なタイトルに反して、音楽的には軽快で聴きやすいロックに仕上がっている。


Storytone(ストーリートーン) 2014年

前作から半年と間を置かずに発表された新作アルバム。2枚組(デラックス版)で、アコースティックによる弾き語りバージョンとオーケストラ・バージョンが、それぞれのディスクに収録されている。オーケストラ盤も一発録りというのがいかにもニールらしい。

環境問題、エネルギー問題への関心が歌われた曲の一方、新たなパートナーとなったダリル・ハンナ(Daryl Hannah)への思いを感じさせる曲もある。美しい曲揃いで、改めてニールのソング・ライティングの才能が分かる。

弾き語り版とオーケストラ版を編集した「Mixed Pages of Storytone」というバージョンもある。


CSNY 1974 CSN&Y 2014年

74年の再結成ツアーを収めたライブ盤。「4 Way Street」としてリリースされている70年ツアーを最後に分裂してしまったCSN&Yの4年ぶりのツアーは100万人以上を動員して大好評のうちに終わったが、その後、ライブ・アルバムや新作アルバムが発表されることはなかった。

それからちょうど40年がたち、グラハム・ナッシュ(Graham Nash)のプロデュースで世に出されたのが今作。「4 Way Street」並と言って良い充実した演奏で、ファン必聴のライブ盤。40曲+DVDの通常版のほか、抜粋の「エッセンシャル」が発売されている。


A Letter Home(ア・レター・ホーム) 2014年

ホワイト・ストライプス(The White Stripes)のジャック・ホワイト(Jack White)との共同プロデュースによるカバー・アルバム。ボブ・ディラン(Bob Dylan)やウィリー・ネルソン(Willie Nelson)、バート・ヤンシュ(Bert Jansch)など、自身のルーツを確かめるかのような選曲で、録音には、ジャケットに写されている1940年代の録音システムが用いられている。そのため音質は不安定で、雑音も混じっているが、それが不思議な味わいを与えている。

ただ、もっと高音質でも聴いてみたかったという気持ちが無いと言えば噓になる。


Live at the Cellar Door(ライヴ・アット・ザ・セラー・ドア) 2014年

1970年11~12月に行われたライブを収録。「Archieves Performance Series」のVol.“2.5”としてリリースされた。

「After the Gold Rush」と「Harvest」をつなぐ時期の、弾き語りのソロ・ライブ。楽曲、演奏、歌のいずれも素晴らしく、この頃の音源はブートレッグでは流通していたが、これほどの高音質で公式から発売されることを喜びたい。


Psychedelic Pill(サイケデリック・ピル) 2012年

オリジナルのフル・アルバムでは「Broken Arrow」以来、なんと16年ぶり。ニールもクレイジー・ホースのメンバーも皆60代どころか、70代が視野に入りつつある。そうした中で届けられたこのアルバムは、様々な不安を吹き飛ばす力に満ちた作品だった。

冒頭の「Driftin’ Back」からライブ感あふれる27分超の演奏で、「Ramada Inn」「Walk Like A Giant」も15分を超す大曲。まさにニールとクレイジー・ホースの顔合わせでしか作れない傑作と言える。


Americana(アメリカーナ) 2012年

アメリカン・フォーク・ソングの名曲を集めたクレイジー・ホースとのアルバム。久しぶりのクレイジー・ホースとの共演がカバー集では寂しい……と感じていたら、2枚組の大作「Psychedelic Pill」が間を置かずに届けられた。


A Tresure(ア・トレジャー) 2011年

「Old Ways」発売前の84~85年のツアーからのライブ盤。カントリー調の曲が多いが、未発表曲も含まれた充実したセットリスト。

インターナショナル・ハーヴェスターズ(The International Harvesters)と名付けたバンドには、ベン・キース(Ben Keith)、ティム・ドラモンド(Tim Drummond)、スプーナー・オールダム(Spooner Oldham)、フィドルにルーファス・ティボドウ(Rufus Thibodeaux)らが参加している。

「Archives Performance Series」のVol.9。


Le Noise(ル・ノイズ) 2010年

これまで作品の制作を有名なプロデューサーに委ねるということが無かったニールだが、ここに来て、U2の「The Joshua Tree」などで知られる巨匠ダニエル・ラノアと組んで新作を発表し、ファンを驚かせた。ラノアのバンド、ブラック・ダブ(Black Dub)の演奏に興味を持ったニールからアプローチしたらしく、自分が興味を持ったことに正直に取り組む、若い頃からのニールの変わらない姿勢が表れた作品と言える。

ギター1本での弾き語り。それも8曲中6曲は、重低音で徹底的に歪ませたエレキ・ギターで、という思い切った構成。ニール以外の誰がこんなアルバムを作れるだろうか。普段のニールのアルバムのようにライブに近い一発録りではなく、随所にラノアの手で処理が施されているが、それがニールのギターの音の魅力をより引き出している。アコースティックの2曲も美しい。

収録曲のうち、「Hitchhiker」は70年代に書かれた曲で、2017年にリリースされた同名未発表アルバムに原曲が収録されている。

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