ダムに沈んだ山人集落の記録。著者は新潟県北部、朝日連峰の山中にある三面集落に1985年の閉村直前に長期滞在し、16ミリフィルムでその生活を記録した。狩りの習俗から、採集、農耕、日常生活まで、村人の語りを中心に丁寧にまとめており、失われた山村の生活の貴重な証言となっている。
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津波の墓標
時間が経つにつれて、言葉が記憶となり、歴史となっていく。過去は日々再構成され、集団の記憶となる。それに抗うためには、個々の体験を残していくしかない。
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あふりこ
川瀬慈編著「あふりこ フィクションの重奏/遍在するアフリカ」
人類学者5人の共著だが、研究報告ではなく、フィクション。
収録作は、川瀬慈「歌に震えて」「ハラールの残響」、村津蘭「太陽を喰う/夜を喰う」、ふくだぺろ「あふりか!わんだふる!」、矢野原佑史「バッファロー・ソルジャー・ラプソディー」、青木敬「クレチェウの故郷」の6編。エチオピア北部で歌を生業とする人々「ラワジ」や、西アフリカの妖術師など題材はさまざま。いずれも実験的な構成、内容で、小説、随想、散文詩などの境界を越えて、読み手を多様なアフリカの姿に誘う。
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かか
背高泡立草
第162回(2019年下半期)芥川賞受賞作。長崎の島を舞台とした家族の物語。納屋の草刈りをするために帰省した家族のとりとめのない会話に、過去の光景が挿まれる。
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国家を食べる
名著「カラシニコフ」などで知られ、ザ・外信記者という経歴・実績を持つ著者の回顧風ノンフィクション。イラク、パレスチナ、ソマリア、エチオピアなど、食にまつわる思い出を軸に、それぞれの国家の問題とそこに生きる人々の息遣いをつづる。
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機関車先生
瀬戸内の小さな学校に口のきけない青年教師がやってくる、というあらすじだけ聞くと、「いい話」を狙いすぎているような気がして身構えてしまうけど、紛れもない名作。
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薄情
舞台は群馬。地方都市の郊外。タイトルに「薄情」とあるのは、主に語り手の宇田川静生の感情の起伏の無さ、人間関係の粘りの無さを表しているが、物語が展開する農村と市街地の境界の、景色の密度、人間の密度の薄さもその言葉にどこか重なる。
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演歌の虫
著者は言うまでもなく「よこはま・たそがれ」などで知られる作詞家で、作家としても多くの作品を残している。本書収録の表題作と「老梅」で直木賞を受賞。他に「貢ぐ女」「弥次郎兵衛」が収録されている。
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草の上の朝食
デビュー作「プレーンソング」の続編。続編と言っても、前作に物語がなかったのだから、そこに付け加えるべき新たな展開もない。成り行きで同棲している男3人、女1人。近所の野良猫に餌をやったり、競馬場に行ったり、マイペースな4人のとりとめのない日常が続く。
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