宮本常一の足跡を訪ねる旅。ただの紀行文ではなく、宮本民俗学を補い、現代につなぐ優れた仕事。
宮本は民俗学者であると同時に稀代の旅人でもあり、優れた農業・地域振興指導者の顔も持っていた。宮本が何を記録し、同時にそれぞれの土地に何を残していったのか。著者は宮本の膨大な資料を読み込んだ上で各地を回り、宮本が見たもの、見残したものを探っていく。
“宮本常一を旅する” の続きを読む
読んだ本の記録。
宮本常一の足跡を訪ねる旅。ただの紀行文ではなく、宮本民俗学を補い、現代につなぐ優れた仕事。
宮本は民俗学者であると同時に稀代の旅人でもあり、優れた農業・地域振興指導者の顔も持っていた。宮本が何を記録し、同時にそれぞれの土地に何を残していったのか。著者は宮本の膨大な資料を読み込んだ上で各地を回り、宮本が見たもの、見残したものを探っていく。
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今年は劉慈欣の「三体」が話題になったものの、中国のSFと言われて具体的な作品が思い浮かぶ人は多くないだろう。そもそも中国文学の邦訳は言語圏の大きさに比して極めて少ない。
本書は中国の作家のSFアンソロジー。7作家の短編13本とともに、SF論的なエッセイや各作家についての解説も収録されている。中国文学の今を伝えるとともに、SFというジャンルの幅と奥行きを示す充実した一冊となっている。
“折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー” の続きを読む
「先生、わしは、エッタやいわれるのが一番つらいネ。なんぼ自分でなおそう思うても、エッタはなおせまへん。先生、どねんしたらエッタがなおるか、教えとくなはれ」
「なア、同じ人間でもえらい違いや。天皇さんは、糞でも宝物にされなはるし、こちとらは、作った米さえ、くさいの、汚いのときらわれる」
明治時代末から大正時代にかけての被差別部落の暮らしを描き、1961~93年に計7部を刊行、800万部を超すベストセラーとなった大河小説。
“橋のない川” の続きを読む
仲野徹・大阪大教授と大阪にまつわる専門家らの対談集。テーマは歴史、言葉、食から、音楽、落語、花街、鉄道など多岐にわたる。気楽な読み物であると同時に、内容はディープ。「面白い対談」の見本のような一冊。
“「仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう」” の続きを読む
石原莞爾の思想が語られる戦中・戦後、心療内科医の主人公が奇妙な体験をする現代、「個」が廃止された地球で現代人のGenius lul-lulがコールドスリープから目を覚ます未来の三つの時代が交互に描かれる。
効率、必然で歴史が進んでいくとしたら、人間を人間たらしめているのは、それに抗う力なのかもしれない。
“キュー” の続きを読む
ゆとり教育を挙げるまでもなく、平成という時代は(表面的には)競争や対立を忌避してきた。その平成が終わった今、世の中はどうしてこんなにギスギスしているのか。
ある事故で意識を失ったままの智也と、彼を献身的に見舞う雄介の2人を軸に平成に育った男女の姿を描く。表面上は親しげに接しながら、言葉の端々でマウントを取り合う様が生々しい。
“死にがいを求めて生きているの” の続きを読む
仕事が長続きしない夫と金融機関に勤める妻。婿養子として妻の実家に同居している夫を残して、妻は単身赴任で札幌に赴く。夫婦のすれ違いの物語だが、二人の感情を綴る筆は穏やかで、どこかチェーホフ的な喜劇のようでもある。
挫折も失敗も重ねながら、二人の関係は続いていく。岡山から北海道まで、旅行や転勤先の風景が二人の人生の背景を彩る。ロードノベルとしての魅力もある。
“夢も見ずに眠った。” の続きを読む
デビューしたものの、著作は絶版になった1冊だけという小説家が、大学で創作を教えることになり、学生との関係を通じて「書くこと」について向き合う。何のため/誰のために書くのか、学生たちとの関係が行き詰まる中で「わたし」は考える。同時に、自分の考えを学生たちに強いても良いものかと悩む。
フレイザーの「金枝篇」に書かれる王殺しのエピソードが、教師と生徒、書き手と読み手/未来の書き手の関係に重ねられる。著者自身も大学の文芸学部で教鞭をとっており、フィクションの中に私小説の雰囲気も漂う。
“藁の王” の続きを読む