戦後最大のベストセラー。少女の成長物語や、教訓に満ちた児童文学としても非常に面白いし、教育論としても今なお読まれる価値がある。
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金色機械
時代小説×ファンタジー。珍しい組み合わせのようで、実際には漫画や娯楽小説、八犬伝などの古典から様々な民話にまでさかのぼる日本文学においては鉄板のテーマ。
危険を察知する天賦の才能に恵まれた遊廓の大旦那と、触れた者の命を奪うことが出来る能力を持った女。二人の半生を、金色様と呼ばれる(C-3POを連想させる)未来から来たアンドロイドの存在が繫ぐ。入り組んだ複数のドラマに、安直な予想を裏切る仕掛けも何度か挟まれ、先へ先へと物語はスピードを上げていく。
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あの夕陽 牧師館 日野啓三短篇小説集
日野啓三の短編集。表題の二作に加えて、戦地で失踪した記者の行方を追うデビュー作の「向こう側」など全八作を収録。幼年時代を植民地の京城で過ごし、その後に新聞記者としてベトナムやソウルで特派員をしていた自らの経験を下敷きとした私的な作風ながら、そこに戦後日本で都市生活を送る虚無感のようなものが滲んでいる。
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鞄の中身
長ければ良い小説というものではないし、凝った文章が豊かであるとも言い切れない。吉行淳之介の短篇は極めて短く、これ以上ないくらい平易な文体で綴られている。それでもそこには複雑な陰影と、長篇小説に劣らぬ広がりがある。
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ダーク・スター・サファリ カイロからケープタウンへ、アフリカ縦断の旅
米国の作家ポール・セローは若い頃、東アフリカで教師をしていた。作家として名を成し、60歳を前にカイロからケープタウンへと大陸をバスと鉄道で縦断することを思い立つ。コンラッドの「闇の奥」を手に、貧困と格差、人種対立の続く“暗黒星”の旅に出る。
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アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン
高野秀行「アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン」
ベトナムの「フイハイ」、奄美大島の「ケンモン」、アフガニスタンの「ペシャクパラング」。
ミャンマーやソマリアのルポで高い評価を受ける著者だが、大学時代のデビュー作「幻獣ムベンベを追え」から一貫して未確認動物=UMAの探求にも力を入れていて、トルコ・ワン湖周辺を舞台とした「怪獣記」など、一連の著作はいずれも面白い。
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くるぐる使い
ミュージシャンとして活躍する傍ら、作家としても多数の小説やエッセイを発表している大槻ケンヂの短編集。オカルト、SF風の5編が収められている。表題作と「のの子の復讐ジグジグ」は星雲賞の受賞作。
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不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか
陸軍の最初の特攻隊「万朶隊」の隊員で、9回出撃し、通常攻撃や機体の故障などで9回とも生きて帰ってきた佐々木友次氏の記録。亡くなる2カ月前までの貴重な証言が収められている。
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海と毒薬
戦時中に九州帝大で行われた米兵捕虜に対する生体解剖事件を題材とした作品。著者の初期の代表作の一つで、手術に立ち会った医学生や看護師のそれまでの人生を描きながら、日本人における罪の意識のあり方を浮かび上がらせる。
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