八月の銀の雪

伊与原新「八月の銀の雪」

いま自分がいる場所、いま自分が見ている光景、いま自分が知っていること、それが全てではないことを自然科学の知識(学問全般にも当てはまるけど)は教えてくれる。それは時に、目の前しか見えなくなった人生の視野を開き、心を軽くしてくれる。科学者らしい短編集。

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掌の小説

川端康成「掌の小説」

掌編小説集。収録作は百編余。散文詩というような、限界まで削ぎ落としたような作品群で、気の利いたオチのあるショートショートではない。軽い読み物のつもりで手に取ったものの、いざ開いてみると一編、一編、読むのに体力が入り、一年以上かけて少しずつ読み進めてきた。
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新作らくごの舞台裏

小佐田定雄「新作らくごの舞台裏」

落語家は自身で新作を創ることが多く、漫才や放送番組なども手がける「演芸作家」ではなく、「落語作家」を名乗る人は少ない。著者は桂枝雀のファンから専属作家になり、次第に一門以外からの依頼も増え、前例のなかった「専業の落語作家」として活躍を続けている。これまでに創った新作落語は263本(江戸落語や古典の改作も含めると倍以上!)にもなるという。
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幻坂

有栖川有栖「幻坂」

大阪には坂が少ない。現在の市街地の大半が沖積平野で起伏がほとんどない。そのぶん、上町台地との間に並ぶ天王寺七坂は、二つの世界を結びつけるような不思議な存在感がある。真言坂、源聖寺坂、口縄坂、愛染坂、清水坂、天神坂、逢坂、という名前もいい。

本書はその七坂を舞台にした連作短編集。本格ミステリのイメージの強い作家だが、本書でつづられるのは怪談。怖いというより、不思議で切ない話が多い。
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