コンテナ物語

マルク・レビンソン「コンテナ物語―世界を変えたのは『箱』の発明だった」

地味なタイトルだが、ノンフィクションの名著として名高い一冊。

「コンテナ」が本格的に登場したのは二十世紀中盤。コンテナは物流コストを劇的に下げ、世界の経済を大きく変えた。箱での輸送は19世紀以前から試みられていたが、陸海共通のコンテナという仕組みはトラック運送で身を興した一人の男の発想だった。そのマルコム・マクリーンの生涯を軸に、社会と経済の変化を追っていく。
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外道クライマー

宮城公博「外道クライマー」

エンタメ系ノンフィクションでは、早くも今年ベストと呼び声高い一冊。2012年、那智の滝に登り逮捕されたクライマーが綴る“山ヤ”よりも無茶苦茶な“沢ヤ”の世界。籔をかき分け、あえて谷底に入り、死と隣り合わせでゴルジュを正面突破する。沢ヤに比べれば、アルパインクライマーのなんと常識的なことか。馬鹿馬鹿しさを突き抜けて、次第に神々しく見えてくる。
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つかこうへい正伝 1968-1982

長谷川康夫「つかこうへい正伝 1968-1982」

間近で青春時代を過ごした著者だからこそ書ける詳細な評伝で、同時に、つかこうへいという特異なキャラクターに関する幻想を剝ぐ破壊力のある内容にもなっている。つかが台本を書かずに役者との共同作業で台詞を作る「口立て」の手法をとったことはよく知られているが、その様子が生き生きと描かれていて、「熱海殺人事件」や「蒲田行進曲」などの制作過程も分かる貴重な一冊。
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幼年期の終わり

アーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」

第1章が書き直されている新版。

宇宙の彼方から超越者が現れ、人類を導く。人はその超越者をオーバーロードと呼び、国家は解体され、差別や格差は撤廃される。絶対に超えられない存在を知った人類は進歩をやめる。宇宙を目指さなくなり、科学も芸術も衰退する。

こう書くとよくあるディストピア小説だが、この作品のスケールはそれにとどまらず、まさに人類の“幼年期の終わり”を描く。
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巨匠とマルガリータ

ミハイル・A・ブルガーコフ「巨匠とマルガリータ」
(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

ずっと前に買ったまま、厚さで敬遠していた一冊。読み始めると、奇想天外な展開に引き込まれてあっという間に読了。第一部は、モスクワに悪魔が現れてやりたい放題。第二部はタイトル通り“巨匠”とマルガリータの恋に焦点が当たる。そこに巨匠が書いたピラトの物語が重なる。
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小説の技巧

デイヴィッド・ロッジ「小説の技巧」

「意識の流れ」「マジック・リアリズム」「信用できない語り手」「複数の声で語る」「エピフィニー」「メタフィクション」など小説の技法を実際の引用文とともに解説。元は英国の新聞連載で、短くまとまっているためとても読みやすい。創作というより批評や読解の入門書として優れている。訳者(柴田元幸)があとがきに記しているように「健全な技術的知識は、同じテクストから読み取れる情報量を増やしてくれるはずである。要するに、小説をより面白く読めるようにしてくれる」。
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毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災

フランク・ディケーター「毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962」

文化大革命の前史であり、人類史に残る政治的失敗である「大躍進」の全体像について、綿密な資料収集をもと描いた労作。何より、中国共産党の恥部についてここまでまとめられたことに驚く。中央の档案館(公文書館)にはアクセスできないため、地方の档案館の資料を用い、当時の悲惨な状況を詳らかにしている。
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定本 黒部の山賊 アルプスの怪

伊藤正一「定本 黒部の山賊 アルプスの怪」

戦後間もない頃に北アルプス最奥の地に山小屋を買い、そこに住み着いていた「山賊」とともに雲ノ平を拓き、登山者を見守ってきた伊藤正一氏。狩りの話から、ヘリコプターの無い時代の小屋建設の苦労、遭難者の救助。さらに、佐々成政の埋蔵金伝説をめぐる悲喜こもごもや、カッパや化け狸の話まで。
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