図説「最悪」の仕事の歴史

トニー・ロビンソン『図説「最悪」の仕事の歴史』

人間は有史以来、さまざまな仕事を生みだしてきた。この本(”The Worst Jobs in History”)が取り扱うのは、古代ローマから近代までの西洋における“最悪の仕事”の歴史。著者は、現代でいう「危険」「汚い」「きつい」の3Kに、「退屈」と「低収入」の二つを加えた3K2Tの仕事の数々を紹介している。
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ホサナ

町田康「ホサナ」

大傑作「告白」に匹敵する約700ページの大作。愛犬家の主人公は、ある日、“日本くるぶし”と名乗る神なのか何なのか分からない声から「正しいバーベーキューをせよ」という啓示を受ける。

物語は繰り返し思索の脇道にそれ、思索もひたすら脇道にそれ続ける。予定調和からは程遠い、無茶苦茶な展開がこれでもかというほど積み重ねられる。こんな突拍子もない物語を綴ることができるのも、饒舌な文体を持っているからこそ。
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おかしなジパング図版帖 -モンタヌスが描いた驚異の王国

宮田珠己「おかしなジパング図版帖 -モンタヌスが描いた驚異の王国」

「十七世紀のオランダ人が見た日本」が非常に面白かったので、そこに登場する本の挿絵を多数収録したこの本も買ってしまった。モンタヌスの著書の挿絵を中心に、丁寧な観察と壮大な勘違いが混ざり合った当時の日本像を紹介している。
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パラレル

長嶋有「パラレル」

デビュー作「サイドカーに犬」、芥川賞受賞作「猛スピードで母は」から、人間同士の微妙な距離感を描くのが巧い作家。

主人公の男は元ゲームデザイナー、今無職。妻の浮気で離婚したものの、その後も他愛のないメールのやりとりを続け、親しい友人としての距離を保っている。大きなアクシデントも、劇的な展開もそこにはない。過去の回想が挟まれつつ、淡々と日常が続いていく。
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西行 魂の旅路 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>

西澤美仁「西行 魂の旅路 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>」

和歌を解するような風雅な心も知識も無いけれど、西行から芭蕉、山頭火に至る旅する歌人が残した歌には幾つか心惹かれるものがある。それは、歌の精神性の高さに感銘を受けるというよりは、身近で分かりやすい感慨を素直な言葉で表現しているからだと思う。
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ジュライホテル バンコクの伝説の安宿

及川タケシ「ジュライホテル バンコクの伝説の安宿」

バンコクの安宿街といったらカオサン通りが有名(今はもう違うかも)だが、90年代半ばまではカオサンに滞在するのは欧米人が中心で、日本人旅行者の溜まり場はチャイナタウンだった。自分は直接その時代を知るわけではないが、楽宮旅社や台北旅社、ジュライホテルの名前は、アジアを旅したことがあるバックパッカーなら聞いたことがある人も多いのではないかと思う。
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