西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史

阿部謹也「西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史」

粗野で生者に災いをなす死者は、キリスト教と共に、生者に助けを求める哀れな死者へイメージを変えた。アイスランド・サガなどからの引用で古代ゲルマンの世界観を説明しながら、キリスト教がどう受容されていくのかを描く。
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地図から読む歴史

足利健亮「地図から読む歴史」

地形や地名に残された微かな意志の断片をもとに歴史を読み解く歴史地理学のエッセンスが詰まった一冊。

郡境がなぜ今のように定まったのか、信長がなぜ安土に城を築いたのか、飛鳥をあすかと読む理由は……。本当に面白くて刺激的な分野。
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大阪 地名の由来を歩く

若一光司「大阪 地名の由来を歩く」

大阪には変わった地名が多い。道頓堀や心斎橋を始め、人名由来のものが多いのは、江戸と違って架橋や開墾などの土木工事が民間主体だった影響だろうか。難読地名の由来が、当初の地名がなまっただけというのも、なんだか土地柄を感じさせて面白い。

地名は、そこに生きてきた人たちの歴史を何よりも感じさせる。合併や行政上の都合でそれが消えていくのは寂しい。

河野広中小伝

高橋哲夫「河野広中小伝」

河野広中は、明治・大正期の政治家で自由民権運動の活動家。福島に住んだり、日本史を学んでいればよく聞く名前だろうけど、今となっては一般的にはそれほど知名度は無いかもしれない。

福島は自由民権運動の先進地であると共に、国会より早く全国初の民会(公選議会)が設置された県でもある。明治14年には議長だった河野広中が中心となって、普通選挙を国に提言している。実際に普選法が成立するより半世紀近く早い。
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安政五年の大脱走

五十嵐貴久「安政五年の大脱走」

断崖絶壁の山の上、天然の要塞に捉えられた南津和野藩士51人。武士の誇りや友情や恋やその他諸々をストレートに詰め込んだ娯楽時代小説。物語の核となる場面は穴を掘るだけだし、展開にひねりも無いけど、やたらと面白い。

検証「大震災」 伝えなければならないこと

毎日新聞震災検証取材班「検証『大震災』 伝えなければならないこと」

昨年4月から毎日新聞に掲載されたもの。テーマごとに分けられ、震災の検証・記録としてはかなり充実しているが、回によって質にばらつきもある。書籍化に際して初期のものはもっと加筆修正しても良かったかもしれない。ただリアルタイムの検証記事として、貴重な記録でもある。