魔境アジアお宝探索記

島津法樹「魔境アジアお宝探索記 ―骨董ハンター命がけの買い付け旅」

フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア……陶磁器、古銭、黄金仏から隕石まで、骨董ハンターの買い付けの旅。各国の骨董商やディーラーとの騙し合いも面白いけど、まだ見ぬ品々を見つけるために密林の小さな集落や遺跡の発掘現場を訪れるくだりが特に面白い。戦利品を国外に持ち出そうとする場面もスリリング。然るべき由緒がついていれば重文や国宝級であっただろう品が次々と登場し、現代の冒険小説のよう。断片的なエピソードが中心で少し物足りないが、こんな世界があったのかという新鮮な驚きを久しぶりに感じさせてくれた一冊。

能を考える

山折哲雄「能を考える」

山折哲雄による能についての随筆集。気付いたことや想像、仮説を綴っているシンプルな内容だが、興味深い視点が多く、考えるヒントがたくさん。仏像と神像の顔つきの違いと「翁」の関係や、世阿弥の息子、元雅についての考察など、能楽や個々の謡曲に対する理解が深まる。特に「弱法師」についての話題は、説経節、浄瑠璃から折口信夫、三島由紀夫へと広がり、芸能の根源に迫っていてスリリング。

千のナイフ、千の目

蜷川幸雄「千のナイフ、千の目」

自伝とエッセイ。蜷川幸雄の仕事は現代の「演出家」という枠を超え、芸術のジャンルが細分化される前の、非日常の空間を提示するという原点に迫るスケールの大きさを感じる。だからこそ、そのフィールドは商業演劇でなくてはならなかったのだろう。五十代のころの文章だが、きっと今もその芯はほとんど変わっていない。80歳を目前になお新しい空間を生み出し続ける、その創造力が何に支えられているのか、なんとなくわかった気がする。

新編 日本の面影

ラフカディオ・ハーン「新編 日本の面影」

ハーンの代表作の一つ、「知られぬ日本の面影」の新編集版。ただの紀行文にとどまらない記述の密度に驚かされる。かなり丁寧に話を聞き、寺社仏閣の由来から民間伝承まで細かく書き込んでいる。情景描写は小説のよう。

「神々の国の首都」「杵築」「日本の庭にて」などでハーンの書く日本はこの上なく美しい。
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ボブ・ディラン自伝

「ボブ・ディラン自伝」

自伝といっても、ぱっと読んだだけではいつのことか分からない部分も多く、決して親切とは言えない内容がこの人らしい。

代弁者と言われることへのいらだち、隠遁生活から「新しい夜明け」への第3章、ダニエル・ラノワとの「オー・マシー」を振り返った第4章などが具体的に語られている一方で、エレクトリックへの転向など、外から見た転機についてはほとんど触れていない。
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芸能語源散策

小池章太郎「芸能語源散策」

古本屋で目についた一冊。「十八番」や「二枚目」、「三枚目」など、芝居由来ということが広く知られている言葉から、「お土砂」などのマイナーな言葉まで、語源を考察しながら歌舞伎の舞台裏などを綴ったエッセイ。ひと昔前の本だけあって、最近は見ない言葉まで載っているのが面白い。

「千松」なんて、『伽羅先代萩』や『伊達の十役』を見たことがあるから意味が推察できたものの、今でも使っているのだろうか。
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