三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾

近藤康太郎「三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾」

大変有用な本である。朝日新聞の名文記者による文章指南書。名高い本多勝一「日本語の作文技術」とともに全ライター志望者必携。文章力の向上に即効性がある一冊。ただ、読みながら「良い文章」とは何だろうか、そんなものあるのだろうか、ということを(自分が気の利いた文章を書けないというやっかみ半分で)考えた。
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○○○○○○○○殺人事件

早坂吝「○○○○○○○○殺人事件」

タイトルの伏せ字も読者への挑戦。さまざまな趣向を懲らしたミステリー。

南の島でのオフ会で殺人事件が起こる。クローズドサークルもののど真ん中のシチュエーションだが、後半で謎が明らかになるにつれて、突っ込みどころがどんどん湧いてくる。核となるトリックにも苦笑い。でも、この馬鹿馬鹿しさは嫌いじゃない。

<以下ややネタバレ>
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スマホ脳

アンデシュ・ハンセン「スマホ脳」

スマートフォンは社会を変えただけでなく、人間をも変質させるかもしれない。

テレビやゲームに加え、そもそも印刷された本ですら、登場した当時は警戒された。しかし、スマホをはじめとする21世紀のデジタル端末の生活への浸透具合は、過去の様々なメディアとは比較にならない。
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千の扉

柴崎友香「千の扉」

ふとしたことから、高齢化が進む団地で夫と暮らし始めた39歳の女性の日常を綴る。特別なことは何も起こらない。特別な人間も出てこない。人探しという物語の軸はあるものの、そこに劇的な展開はない。

著者の筆は過去と現在を行き来しながら、団地とそこで暮らした人々の記憶を浮かび上がらせる。ひと言声をかわしただけの人物にも、すれ違っただけの人にも、人生があり物語がある。
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八月の銀の雪

伊与原新「八月の銀の雪」

いま自分がいる場所、いま自分が見ている光景、いま自分が知っていること、それが全てではないことを自然科学の知識(学問全般にも当てはまるけど)は教えてくれる。それは時に、目の前しか見えなくなった人生の視野を開き、心を軽くしてくれる。科学者らしい短編集。

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掌の小説

川端康成「掌の小説」

掌編小説集。収録作は百編余。散文詩というような、限界まで削ぎ落としたような作品群で、気の利いたオチのあるショートショートではない。軽い読み物のつもりで手に取ったものの、いざ開いてみると一編、一編、読むのに体力が入り、一年以上かけて少しずつ読み進めてきた。
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新作らくごの舞台裏

小佐田定雄「新作らくごの舞台裏」

落語家は自身で新作を創ることが多く、漫才や放送番組なども手がける「演芸作家」ではなく、「落語作家」を名乗る人は少ない。著者は桂枝雀のファンから専属作家になり、次第に一門以外からの依頼も増え、前例のなかった「専業の落語作家」として活躍を続けている。これまでに創った新作落語は263本(江戸落語や古典の改作も含めると倍以上!)にもなるという。
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