骨董屋の二階に居候することになった「僕」の目を通して、店長、常連客、大家とその孫姉妹といった人々との日常が綴られる。
著者の他の作品と同様、物語に大きな起伏はない。それどころか、「僕」を含めた登場人物の背景さえほとんど説明されず、日々のやりとりだけが描かれる。「僕」の来歴や、なぜ骨董屋に居候することになったのかなどは最後まで分からない。ただ、淡々とそれぞれの人生を生きていくことを肯定するような柔らかな空気がある。
“夕子ちゃんの近道” の続きを読む
読んだ本の記録。
骨董屋の二階に居候することになった「僕」の目を通して、店長、常連客、大家とその孫姉妹といった人々との日常が綴られる。
著者の他の作品と同様、物語に大きな起伏はない。それどころか、「僕」を含めた登場人物の背景さえほとんど説明されず、日々のやりとりだけが描かれる。「僕」の来歴や、なぜ骨董屋に居候することになったのかなどは最後まで分からない。ただ、淡々とそれぞれの人生を生きていくことを肯定するような柔らかな空気がある。
“夕子ちゃんの近道” の続きを読む
高校の図書部員たちの日常を素朴な筆で綴る。
文化系の青春もの。と言っても、大きな事件が起こるわけでもないし、ドラマティックな展開は何も無い。でもそれこそが青春なんだと思わせる魅力がある。
“ぼくは落ち着きがない” の続きを読む
著者の小説は、悲劇でもなければ喜劇でもない、日常描写のような場面が淡々と続き、それでいて読み終えると日々の風景の見え方が変わったような気がする不思議な手触りがある。
本書はタイトルだけを見ればハウツー本のようだが、小説の書き方というより、小説論といった内容。著者は小説とは何かを繰り返し問う。
“書きあぐねている人のための小説入門” の続きを読む
かなり久しぶりに再読。村上春樹の長篇小説は要約が不可能か、要約すると意味を成さなくなるものが多いが、この作品は比較的あらすじが説明しやすい。
“国境の南、太陽の西” の続きを読む
「悪童日記」(原題“Le grand cahier”=大きなノート)の続編。巻が進むに連れ、文体とともに物語の見え方も大きく変わる。
“「ふたりの証拠」「第三の嘘」” の続きを読む
久しぶりの海外ミステリー。「ボーン・コレクター」から始まるリンカーン・ライムシリーズの第7弾。
“ウォッチメイカー”と名乗る犯罪者が、様々な拷問手法に想を得た残虐な手段で犯行を重ねていく。それに立ち向かうのは、科学捜査のプロフェッショナルで、四肢麻痺の天才――いわゆる安楽椅子探偵――のリンカーン・ライム。相棒で恋人のアメリア・サックス、キネシクスを用いた尋問のエキスパート、キャサリン・ダンスらとともに捜査を続けるうちに、ウォッチメイカーの事件と、警察官らによる汚職事件が交錯し、物語の展開は後半に行くにつれて加速していく。
“ウォッチメイカー” の続きを読む
古びたアパート。破格の家賃につられて入居すると、それぞれの部屋に地縛霊が取り憑いていて、幽霊との共同生活が始まる。ホラーというよりも、ファンタジータッチの人情喜劇。著者の作品はデビュー作の「夏光」しか読んだことがなかったので、作風の違いに驚いた。
“てふてふ荘へようこそ” の続きを読む
東京の裕福な家庭に育った姉妹の戦後の物語。母親を早くに亡くし、一緒に暮らしていた父親は戦犯容疑で連れて行かれてしまう。家を守るため、姉妹は自宅を米兵相手の慰安所にして生活費を稼ぐようになる。そこに特攻隊帰りの青年や、姉妹の父によって慰安所で働くことになった少女のエピソードが絡む。
“退廃姉妹” の続きを読む
久しぶりにファンタジーが読みたくなったので、未読だった人気シリーズを一気読み。「I 闘蛇編」「II 王獣編」「III 探求編」「IV 完結編」「外伝 刹那」の5巻。
闘蛇と王獣という兵器になり得る力を持った生物を巡る物語。厳しい戒律で管理され、決して人に馴れぬとされてきた王獣を操る技術を身につけてしまったことで、主人公の少女は運命の奔流に巻き込まれる。闘蛇と王獣を近代兵器のメタファーとした寓話としても読めるが、エンタメ小説にそうした解釈を一々差し挟むのは無粋だろう。とにかく面白い。
“獣の奏者” の続きを読む