井上靖「わが母の記」
80歳の母を描いた「花の下」、85歳の「月の光」、89歳の死去までを綴った「雪の面」。随筆のような小説。
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読んだ本の記録。
松本仁一「兵隊先生 沖縄戦、ある敗残兵の記録」
敗戦間近の沖縄。部隊でただ一人生き残った兵士は、ある家族に助けられ、沖縄県民と身分を偽って、米軍が設けた避難民キャンプの教師になる。
沖縄に送られた日本兵が何を思ったのか。ひとりの“兵隊さん”と人々がどう関わったのか。
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阿部謹也「西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史」
粗野で生者に災いをなす死者は、キリスト教と共に、生者に助けを求める哀れな死者へイメージを変えた。アイスランド・サガなどからの引用で古代ゲルマンの世界観を説明しながら、キリスト教がどう受容されていくのかを描く。
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尾崎翠「第七官界彷徨」
これまた不思議な小説。
少女と兄2人と従兄との共同生活の物語。誰もが誰かに失恋している。
“第七官”に届く詩を書きたいとか、蘚の恋のために部屋で肥やしを煮るとか、少女漫画のような雰囲気と、シュールで前衛的な雰囲気、切ない叙情的な雰囲気とが混ざり合って、最後まで読んでも結局良くわからないまま。仮名遣いとか作中に出てくる品を除けば、いつの時代の作品か全く想像ができそうにない。
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大江健三郎「万延元年のフットボール」
久しぶりの大江作品。とにかく過剰。描写も要素も醜悪さも希望も。
万延元年の一揆を通奏低音とした作品だが、要約が不可能なほど主題が入り組んでいる。
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足利健亮「地図から読む歴史」
地形や地名に残された微かな意志の断片をもとに歴史を読み解く歴史地理学のエッセンスが詰まった一冊。
郡境がなぜ今のように定まったのか、信長がなぜ安土に城を築いたのか、飛鳥をあすかと読む理由は……。本当に面白くて刺激的な分野。
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