インドの食文化について書かれた紀行本やレシピ本は珍しくないが、本書のテーマは“日本の中のインド食文化”。アジア食器などの輸入販売を手がけている著者は、各地のインド料理店や食材店を巡り、異国に根付き、変化していく食文化を追う。
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最終便に間に合えば
直木賞受賞作。手練れの恋愛小説。表題作は、かつて恋人だった男女が再会した夜の微妙な空気を描く。互いに若い頃より社会的な立場が上がり、優越感と郷愁が入り交じる、その微妙でいやらしい緊張感が著者の真骨頂。
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我らが少女A
朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ
日本の戦後を象徴する詩人の自伝。
1929年に日本の植民地下の釜山で生まれた著者は、皇民化教育で日本語を学び、「皇国」の勝利を信じて育った。解放後に民族意識に目覚めたが、日本の詩歌に親しみを感じ、ハングルを満足に使いこなすことができない自分に深いコンプレックスを抱く。
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むらさきのスカートの女
化粧っ気が無く、不器用で、いつも公園の決まったベンチに座って子供たちにからかわれている「むらさきのスカートの女」。商店街の誰もが知っている彼女のことが気になり、友だちになりたいと思う「わたし」=目立たない自称「黄色いカーディガンの女」の視点から、その日常が描かれる。
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旅人 ある物理学者の回想
日本人として初めてノーベル賞を受賞した物理学者の、少年期から青年期までを綴った自伝。
内向的で、兄弟の中でも目立つ存在ではなかった少年が、どんな青春時代を過ごし、学問に目覚めていったのか。
文学少年だった著者は、数学や哲学などの学問に触れながら、次第に物理学への興味を深めていく。「旅人」とタイトルにあるように、時代の空気、人や本との出会い、さまざまな偶然が人を予想も付かなかった場所に運んでいく。
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海の鳥・空の魚
「どんな人にも光を放つ一瞬がある。その一瞬のためだけに、そのあとの長い長い時間をただただすごしていくこともできるような」
忘れられない一瞬、それもドラマティックな場面ではなく、自分でもなぜその場面を繰り返し思い出してしまうか分からないような瞬間を切り取ったような、鮮やかな短編集。
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あとは野となれ大和撫子
直木賞と芥川賞の候補にそれぞれ選ばれ、硬軟幅広い作風を持つ作家の直木賞候補作の一つ。
設定が秀逸。舞台は中央アジア、干上がったアラル海に建国された架空の国アラルスタン。しがらみのない新たな国は、ソ連崩壊や民族紛争の混乱を逃れて周辺国からの難民が集まり、中央アジアにおける「自由主義の島」と呼ばれている。
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「右翼」の戦後史
日本の政治は、左右や保守、リベラルという軸では説明が難しい。特に右翼の思想は戦前と戦後で大きく変わり、戦後史の中でも何度も立ち位置を変えている。
国粋主義者であるはずの右翼がなぜ親米を掲げるのか。反政府の民族主義者として民族差別を嫌悪し、政治の腐敗に怒ったはずの右翼が、なぜ政権の応援団になり、少数派を抑圧する存在になってしまったのか。
近代以降の日本の右翼の歩みを、当事者への取材を重ねてまとめた労作。著者は伝統的な右翼思想には理解を示す一方、ネット右翼をはじめとする差別主義者を厳しく批判する。
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妊娠カレンダー
「博士の愛した数式」や「ミーナの行進」のイメージで読むと戸惑うかもしれない。静謐で美しい文体は共通しているが、どこかもやもやとしたものが残る、仄暗い短編集。表題作のほか、「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」を収録。
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