しばらく読書メモをつける習慣が途絶えてしまっていたけど、1年の終わりに、印象に残ったものだけはまとめておこうと思う。
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今年、フィクションでもっとも楽しく読んだのは多分に漏れず「三体」三部作。全5巻。
読んでいる間、現実と物語の重さが逆転してしまうほど引き込まれる作品というのは滅多に出会えるものではないけど、これは、わりと本気で仕事とかどうでもよくなるほど作品世界に浸ることができた。1週間、寸暇を惜しんで読み続けた。
“三体/三体Ⅱ 黒暗森林/三体Ⅲ 死神永生” の続きを読む
読んだ本の記録。
しばらく読書メモをつける習慣が途絶えてしまっていたけど、1年の終わりに、印象に残ったものだけはまとめておこうと思う。
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今年、フィクションでもっとも楽しく読んだのは多分に漏れず「三体」三部作。全5巻。
読んでいる間、現実と物語の重さが逆転してしまうほど引き込まれる作品というのは滅多に出会えるものではないけど、これは、わりと本気で仕事とかどうでもよくなるほど作品世界に浸ることができた。1週間、寸暇を惜しんで読み続けた。
“三体/三体Ⅱ 黒暗森林/三体Ⅲ 死神永生” の続きを読む
「畔を歩く」「小屋を造る」「四股を踏む」と表題作「小屋を燃す」の4編。医師として働きながら、私小説的な等身大の小説を発表してきた著者の退職後の日々。
うつ病を発症し、理想通りにはいかなかった医師としての半生。そして、退職。地元の仲間たちと小屋を建て、酒を酌み交わす。その日々もやがて終わりを告げる。
“小屋を燃す” の続きを読む
中学入学を控えた姪と、小説家の「私」が利根川沿いを歩いて旅する。道中、サッカーに打ち込んでいる少女はリフティングを、「私」は風景描写の「練習」を続ける。コロナ禍のロード・ノベルであり、柳田国男ら先人への言及には評論、随筆的な味わいも。
“旅する練習” の続きを読む
自伝的、随筆的小説。新聞の日曜版に連載されたもの。回想が主だが、終盤は今の生活が綴られる。
著者は、作家であり、実業家であり、多くの作家、芸術家との恋愛遍歴でも知られる。
“生きて行く私” の続きを読む
VRのような「もう一つの世界」は、もはや荒唐無稽な設定や、遠い未来の話とは感じられなくなってきている。技術としては未熟でも「SF」というフィクションの枠を超えたリアリティを持ち始めている。
“アメリカン・ブッダ” の続きを読む
田舎町の選挙を巡る騒動。セコい大人たちの思惑が入り乱れ、その中で追い詰められていく「おれ」。幼い、でもだからこそある意味で大人くさくもある主人公の造形が読み手を引き込む。そのぶん、狂気と暴力の結末に、無理やり物語の幕を引いたような物足りなさが残った。
併録の「天空の絵描きたち」は、ビルのガラス拭きたちの人間模様を描いたストレートな人間ドラマ。これまで単行本に収録されなかったのが不思議な傑作。ドラマ化、映画化されれば、映像でも映えそう。
深沢七郎「笛吹川」
再読。
戦国時代の笛吹川沿いに暮らした農民一家の物語。武田家の盛衰を背景に、歴史に名を残すこともない人々が次々と生まれては死んでいく。
そこには、意味もドラマもない。戦国時代を描いてはいるが、いわゆる時代小説、歴史小説とは全く手触りが違う。著者は、歴史でも過去でもなく、人間という存在の本質的な軽さのようなものを見つめている。
“笛吹川” の続きを読む
フォークからロック、演歌、“エンヤトット”と、ジャンルを超えて歩んできた歌手、岡林信康の半生の聞き書き。聞き手・構成はディスクユニオンの矢島礁平氏。
“岡林、信康を語る” の続きを読む