表題作は、数々の名作を著した文豪(という呼称はあまり似合わないかも)の記念すべき芥川賞受賞作。豪快なキャリアウーマンが「(共産)党員」に恋して大騒ぎ。著者らしいユーモア溢れる男女の物語。
表題作も面白いが、併録作がいずれも素晴らしい。すれ違えない狭い田舎道で鉢合わせた路線バスの運転手の意地の張り合いを描く「山家鳥虫歌」、タイトルからは想像できない痛快な下ネタ「喪服記」、ほかに「大阪無宿」「鬼たちの声」「容色」「とうちゃんと争議」「女運長久」。何気ない日常の一場面を重ねていって人生の哀歓を浮かび上がらせる。諷刺が効いていて、やわらかな大阪弁も読んでいて心地いい。
“感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)” の続きを読む