「地球の歩き方」の歩き方

山口さやか、山口誠『「地球の歩き方」の歩き方』

黄色い表紙、青い小口塗りのガイドブックを手に初めての海外に出た人は少なくないのでは。

「地球の歩き方」は1979年創刊。海外旅行の自由化から15年が経っていたが、当時のガイドブックはパッケージツアーの参加者向けに異文化や観光地を紹介するものばかりで、移動手段や宿泊情報を載せた「歩き方」は画期的だった。

本書はその創刊に携わった4人、安松清氏、西川敏晴氏、藤田昭雄氏、後藤勇氏のインタビュー。「歩き方」の歩みは、そのまま日本の「自由旅行」「個人旅行」の歴史になっている。
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ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

大前粟生「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

表題作は、ぬいぐるみサークルの男女を中心とした物語。主人公は人を傷付けることを病的なまでに忌避し、他者の事情に踏み込むことに対して極めて臆病。恋バナに乗れず、男同士の露骨な会話に生理的な嫌悪感を抱く。自分が男であるというだけで、加害者の立場にいると気にしている。

こういう感性の人は昔からいただろうが、その消極的な“優しさ”は非常に現代的だと感じる。令和文学史、あるいは2020年代文学史が語られる時に、その初めに登場する作品になるかもしれない。
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ガンジス河でバタフライ

たかのてるこ「ガンジス河でバタフライ」

20歳女子の一人旅。香港、シンガポール、マレーシア、インド。刊行は2000年だが、綴られている旅は90年代の初めのもの。ベストセラーで、テレビドラマ化されたこともあって、著者は女性バックパッカーのアイコンのようなイメージを築いた。
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