怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道

高野秀行「怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道」

ある意味、すごいノンフィクション。

デビュー作「幻獣ムベンベを追え」から未確認動物を旅の一つのテーマとしてきた著者は、あるウェブサイトで、インドの浜辺で謎の魚を見たという投稿を見つけ、インド行きを画策する。

事前調査・準備という旅の助走の描写がやけに長い。そして本の半ばを過ぎたところで最大の関門である、インドに入国できないという問題が立ち塞がる。著者は「西南シルクロードは密林に消える」でインドに密入国、強制送還されており、その記録が残っていたのだ。
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食べ歩くインド

小林真樹「食べ歩くインド」北・東編 南・西編

 

すごい本である。インドの多様な食を紹介――といっても、研究者による食文化論ではない。タイトル通り、全インドを食べ歩くためのグルメガイド。かなり分かりやすく書かれているが、それでもニハーリーやクルチャーなどなじみのない言葉が次々と出てきて、文章を読みながら、異文化の中を旅している気分になる。「北・東編」「南・西編」の2分冊でボリュームたっぷり。旅行人の情報量の多いガイドブックを開いた時の興奮を思い出した。
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四畳半タイムマシンブルース

森見登美彦著、上田誠原案「四畳半タイムマシンブルース」

名著「四畳半神話大系」の16年ぶりの続編にして、久しぶりの“腐れ大学生”もの。といっても前作の後日譚を描くのではなく、外伝、二次創作的な内容。劇団「ヨーロッパ企画」の名作「サマータイムマシン・ブルース」を「四畳半」の世界に翻案し、おなじみのキャラがタイムマシンを巡る騒動を繰り広げる。
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京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男

花房観音「京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男」

「ミステリーの女王」と呼ばれた山村美紗の評伝。

他の作家に京都を舞台にしたミステリーを書くことを許さなかった。広告で自分より名前が大きく掲載された作家がいると、編集者を呼び出して謝罪させた――。数々の伝説に彩られた女王の生涯を、「ふたりの男」との関係を軸に描く。
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童の神

今村翔吾「童の神」

タイトルの童は子供ではなく、まつろわぬ民のことを指す。鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥などの名で呼ばれ、京人(みやこびと)から恐れ、蔑まれた人々。彼らが手を携え、朝廷に立ち向かう。

朝廷による蝦夷征討が一種の侵略であるという理解は今では珍しくないが、著者は大江山の鬼退治伝説に注目し、京周辺の被征服民に光を当てる。
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紙の動物園

ケン・リュウ「紙の動物園」

さほどSFを読まない身からすると、SFと言われると、どうしても、科学、未来、宇宙、のような言葉が思い浮かぶ。そして、たまに手に取ると、その多彩さに驚かされる。サイエンスに想像力を働かせるだけでなく、サイエンスの制約から想像力を解き放ったフィクションもSFなのかもしれない。

本書は中国出身の米国人作家、ケン・リュウの日本オリジナル短編集。ベスト盤のようなものだから、面白くないわけがない。
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芝居小屋戦記 神戸三宮シアター・エートーの奇跡と軌跡

菱田信也「芝居小屋戦記 神戸三宮シアター・エートーの奇跡と軌跡」

2017年4月に神戸・三宮に誕生した小劇場「神戸三宮シアター・エートー」。新築4階建てで客席数100。楽屋、シャワー室、稽古に使える多目的室なども備えている。路地裏のコインパーキングが、演劇人の理想が詰まった小劇場に生まれ変わった。

神戸を拠点に劇作家・演出家として活躍し、同劇場の芸術監督に就任した著者が、劇場設立の経緯や運営の苦労をつづったドキュメント。劇場の運営経費や自主公演の収支、失敗談なども赤裸々に盛り込んでいる。
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