「畔を歩く」「小屋を造る」「四股を踏む」と表題作「小屋を燃す」の4編。医師として働きながら、私小説的な等身大の小説を発表してきた著者の退職後の日々。
うつ病を発症し、理想通りにはいかなかった医師としての半生。そして、退職。地元の仲間たちと小屋を建て、酒を酌み交わす。その日々もやがて終わりを告げる。
“小屋を燃す” の続きを読む
読んだ本の記録。
「畔を歩く」「小屋を造る」「四股を踏む」と表題作「小屋を燃す」の4編。医師として働きながら、私小説的な等身大の小説を発表してきた著者の退職後の日々。
うつ病を発症し、理想通りにはいかなかった医師としての半生。そして、退職。地元の仲間たちと小屋を建て、酒を酌み交わす。その日々もやがて終わりを告げる。
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中学入学を控えた姪と、小説家の「私」が利根川沿いを歩いて旅する。道中、サッカーに打ち込んでいる少女はリフティングを、「私」は風景描写の「練習」を続ける。コロナ禍のロード・ノベルであり、柳田国男ら先人への言及には評論、随筆的な味わいも。
“旅する練習” の続きを読む
自伝的、随筆的小説。新聞の日曜版に連載されたもの。回想が主だが、終盤は今の生活が綴られる。
著者は、作家であり、実業家であり、多くの作家、芸術家との恋愛遍歴でも知られる。
“生きて行く私” の続きを読む
VRのような「もう一つの世界」は、もはや荒唐無稽な設定や、遠い未来の話とは感じられなくなってきている。技術としては未熟でも「SF」というフィクションの枠を超えたリアリティを持ち始めている。
“アメリカン・ブッダ” の続きを読む
田舎町の選挙を巡る騒動。セコい大人たちの思惑が入り乱れ、その中で追い詰められていく「おれ」。幼い、でもだからこそある意味で大人くさくもある主人公の造形が読み手を引き込む。そのぶん、狂気と暴力の結末に、無理やり物語の幕を引いたような物足りなさが残った。
併録の「天空の絵描きたち」は、ビルのガラス拭きたちの人間模様を描いたストレートな人間ドラマ。これまで単行本に収録されなかったのが不思議な傑作。ドラマ化、映画化されれば、映像でも映えそう。
深沢七郎「笛吹川」
再読。
戦国時代の笛吹川沿いに暮らした農民一家の物語。武田家の盛衰を背景に、歴史に名を残すこともない人々が次々と生まれては死んでいく。
そこには、意味もドラマもない。戦国時代を描いてはいるが、いわゆる時代小説、歴史小説とは全く手触りが違う。著者は、歴史でも過去でもなく、人間という存在の本質的な軽さのようなものを見つめている。
“笛吹川” の続きを読む
フォークからロック、演歌、“エンヤトット”と、ジャンルを超えて歩んできた歌手、岡林信康の半生の聞き書き。聞き手・構成はディスクユニオンの矢島礁平氏。
“岡林、信康を語る” の続きを読む
表題作は、数々の名作を著した文豪(という呼称はあまり似合わないかも)の記念すべき芥川賞受賞作。豪快なキャリアウーマンが「(共産)党員」に恋して大騒ぎ。著者らしいユーモア溢れる男女の物語。
表題作も面白いが、併録作がいずれも素晴らしい。すれ違えない狭い田舎道で鉢合わせた路線バスの運転手の意地の張り合いを描く「山家鳥虫歌」、タイトルからは想像できない痛快な下ネタ「喪服記」、ほかに「大阪無宿」「鬼たちの声」「容色」「とうちゃんと争議」「女運長久」。何気ない日常の一場面を重ねていって人生の哀歓を浮かび上がらせる。諷刺が効いていて、やわらかな大阪弁も読んでいて心地いい。
“感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)” の続きを読む