寡作なSF作家、テッド・チャンの短編集。表題作など8編。ファンタジー的な「バビロンの塔」から、「アルジャーノンに花束を」を連想させる「理解」、差別の問題を扱った「顔の美醜について」まで、題材、趣向はさまざまだが、科学、言語、倫理、宗教などのもたらす世界観の相剋が物語の根底にある。
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小説の自由
小説をどう書くか、小説をどう読むか、そもそも小説とは何か、という問いを巡る文章は古今東西繰り返し綴られてきた。著者の小説を読んだことがあれば、そもそも論旨明快な小説論を期待して本書を手に取ることはないだろうが、完成された評論というより思考の記録といったほうが近い。つまり、ひと言ではまとめられない。
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熱源
樺太アイヌのヤヨマネクフと、故郷を奪われたリトアニア生まれのポーランド人、ブロニスワフ。史実に基づいて展開する2人の生涯が“文明”に抗った人々の熱を現代によみがえらせる。
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ドサ健ばくち地獄/新麻雀放浪記 申年生まれのフレンズ
阿佐田哲也「ドサ健ばくち地獄」
「新麻雀放浪記 申年生まれのフレンズ」
戦後を代表する大衆小説で、青春小説、ピカレスクロマンの金字塔「麻雀放浪記」。「ドサ健ばくち地獄」と「新麻雀放浪記」はその続編にあたり、時代は「麻雀放浪記」の数年後と十数年後。それぞれ、ドサ健を取り巻く人間模様と、40歳になった坊や哲が、若い“ヒヨッ子”の師匠になる話が綴られる。
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婚礼、葬礼、その他
中編2本。表題作は、旅行に行こうと思っていた連休に友人の結婚式のスピーチと2次会の幹事を任され、当日は会社の上司の父親の通夜に呼び出されるというドタバタを描く。主人公のヨシノは食事のタイミングを逃し、猛烈な空腹感の中、周りに振り回され続ける。
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デッドライン
大学の修士課程の2年間。ハッテン場に出入りしながら、大学の仲間や指導教員とのやりとりの中で自分を探し、デッドラインに向けてもがく日々が綴られる。
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21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考
ユヴァル・ノア・ハラリ「21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考」
「自由」「宗教」「戦争」など、21のテーマをめぐる考察。本書で最も(というか唯一)印象に残ったのが、大衆の存在意義がなくなる時代が迫っているという指摘。「存在意義の喪失と戦うのは、搾取と戦うよりもはるかに難しい」と著者は書く。
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スワン
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
英国の公立学校に通う息子との日々をつづったエッセイ。
著者は英国の“最底辺保育所”で働いた経験を持つライター。イエローでホワイトでもある息子は、落ち着いたカトリックの小学校に通っていたが、あえてさまざまな社会階層の子が集まる“元底辺中学校”への進学を選ぶ。その学校生活を通じて、英国社会のさまざまな問題が浮き彫りになる。同時に、教育のおいて本当に必要なことは何かを考えさせられる。
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変半身(かわりみ)
表題作は「サンプル」の松井周との共同取材・原案プロジェクト「inseparable」で書かれた中編。架空の島を舞台に、信仰や歴史といった「常識」がいとも簡単に覆ってしまう様を描く。
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