婚礼、葬礼、その他

津村記久子「婚礼、葬礼、その他」

中編2本。表題作は、旅行に行こうと思っていた連休に友人の結婚式のスピーチと2次会の幹事を任され、当日は会社の上司の父親の通夜に呼び出されるというドタバタを描く。主人公のヨシノは食事のタイミングを逃し、猛烈な空腹感の中、周りに振り回され続ける。
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夏物語

川上未映子「夏物語」

個人の決定が尊重される時代であっても、誕生だけは当人の意志で左右できない。ならば命を生み出すことは、一方的な欲望の押しつけなのか。

本書は芥川賞受賞作「乳と卵」と前半部が重なっている。続編というよりも、全面的に書き換え、大幅に加筆した物語と言った方が正確だろう。
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ほしのこ

山下澄人「ほしのこ」

海沿いの小さな小屋。社会の外側で暮らす父と娘。少女は父親から遠くの星から来たと言われて育つ。やがて父はいなくなる。入れ替わるように、どこかから女の子がやってくる。後半、物語の視点は揺れ動き、「わたし」は山に落ちた飛行機乗りになっている。生と死の影が混ざり合う。
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