いわゆるライトノベルを中心に書いてきた作家だが、作品のテーマは真摯で重い。
物語の舞台は、被征服民にルーツを持つ「緑色の目」の住民への差別、偏見が根深く残っている架空の日本。全寮制の学園に通う坂口孝文は緑の目を持つ転入生、茅森良子と知り合い、次第にひかれていく。
“昨日星を探した言い訳” の続きを読む
読んだ本の記録。
いわゆるライトノベルを中心に書いてきた作家だが、作品のテーマは真摯で重い。
物語の舞台は、被征服民にルーツを持つ「緑色の目」の住民への差別、偏見が根深く残っている架空の日本。全寮制の学園に通う坂口孝文は緑の目を持つ転入生、茅森良子と知り合い、次第にひかれていく。
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33の物語。いずれも短編というより掌編の短さだが、まずタイトルの長さが目を引く。
冒頭に収められているのが「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」。
“百年と一日” の続きを読む
どれも著者自身を思わせる一人称の人物が語り手。久しぶりの一人称で書かれた前作長編「騎士団長殺し」がセルフパロディのような要素をたくさん盛り込みつつ、以前の作品とは決定的に違う手触りになっていたように、短編も一周回って別の場所にたどり着いたような著者の今を感じさせる。
“一人称単数” の続きを読む
体育会系の青年。一見すると心身共に健康で、人当たりも良い人物だが、読んでいてどこか気持ち悪い。他者に(どころか自分に対しても)興味がなく、目の前のことにだけ反応して生きている。
「他者に迷惑をかけないが自己中心的」という人物像は、極めて現代的。
“破局” の続きを読む
1991年のザイール、2012年のコンゴ。著者は、21年の歳月を隔てて、ザイール/コンゴ河の同じルートを丸木舟で旅する。一度目は夫婦で、二度目は若い研究者と。
“たまたまザイール、またコンゴ” の続きを読む
著者の西東三鬼(1900~62)は俳人。「神戸」は、戦後間もない1954~56年に「俳句」誌に連載された文章。戦中に神戸の「国際ホテル」で過ごした日々の回想で、文章そのものは短いが、登場人物の濃さと、それを淡々と綴る著者の文章のギャップがなんとも言えない魅力を醸し出している。しばらく絶版となっていたが、昨年復刊され、新潮文庫に収録された。
“神戸・続神戸” の続きを読む
原題は「Bootleg」。選挙で勝利した「健全健康党」がチョコレート禁止法を発令。健康に悪いという理由で菓子やジュースが禁じられた社会で、少年たちがチョコレートの密造を始める。
“チョコレート・アンダーグラウンド” の続きを読む
ある意味、すごいノンフィクション。
デビュー作「幻獣ムベンベを追え」から未確認動物を旅の一つのテーマとしてきた著者は、あるウェブサイトで、インドの浜辺で謎の魚を見たという投稿を見つけ、インド行きを画策する。
事前調査・準備という旅の助走の描写がやけに長い。そして本の半ばを過ぎたところで最大の関門である、インドに入国できないという問題が立ち塞がる。著者は「西南シルクロードは密林に消える」でインドに密入国、強制送還されており、その記録が残っていたのだ。
“怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道” の続きを読む
すごい本である。インドの多様な食を紹介――といっても、研究者による食文化論ではない。タイトル通り、全インドを食べ歩くためのグルメガイド。かなり分かりやすく書かれているが、それでもニハーリーやクルチャーなどなじみのない言葉が次々と出てきて、文章を読みながら、異文化の中を旅している気分になる。「北・東編」「南・西編」の2分冊でボリュームたっぷり。旅行人の情報量の多いガイドブックを開いた時の興奮を思い出した。
“食べ歩くインド” の続きを読む