ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

英国の公立学校に通う息子との日々をつづったエッセイ。

著者は英国の“最底辺保育所”で働いた経験を持つライター。イエローでホワイトでもある息子は、落ち着いたカトリックの小学校に通っていたが、あえてさまざまな社会階層の子が集まる“元底辺中学校”への進学を選ぶ。その学校生活を通じて、英国社会のさまざまな問題が浮き彫りになる。同時に、教育のおいて本当に必要なことは何かを考えさせられる。
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西脇順三郎詩集

「西脇順三郎詩集」那珂太郎編

西脇順三郎の詩は難解と言われる。時間も場所も飛び越えた奔放なイメージの連なりは、たしかに分かりやすい物語ではない。しかしそこに描かれている情景は、植物だったり、自然の地形だったり、日々の生活の一コマだったり、決して日常からかけ離れたものではない。詩の良し悪しを語れるほどの知識も感性もないけど、解釈しようという意思を捨て、イメージのコラージュに身を任せるだけで、その世界を十分に楽しむことができる。
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辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

高野秀行「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」

食に関する名著はいろいろあるが、そこに並ぶ(と同時に異彩を放つ)一冊と言ってもいいだろう。

ゴリラにムカデ、タランチュラと、食材もさまざまなら、ヤギの胃液のスープや、豚の生き血の和え物、ヒキガエルをミキサーにかけたジュースなど調理法も多種多様。何をどう食べるかには人間の叡智、というのは大げさかもしれないが、人間の積み重ねてきた歴史が詰まっている。登場する料理の珍しさに目が行くが、食感や風味など、丁寧かつ的確(か確かめようがないけど)な表現で、なんとなく食べた気にさせる筆力がみごと。
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夏物語

川上未映子「夏物語」

個人の決定が尊重される時代であっても、誕生だけは当人の意志で左右できない。ならば命を生み出すことは、一方的な欲望の押しつけなのか。

本書は芥川賞受賞作「乳と卵」と前半部が重なっている。続編というよりも、全面的に書き換え、大幅に加筆した物語と言った方が正確だろう。
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ほしのこ

山下澄人「ほしのこ」

海沿いの小さな小屋。社会の外側で暮らす父と娘。少女は父親から遠くの星から来たと言われて育つ。やがて父はいなくなる。入れ替わるように、どこかから女の子がやってくる。後半、物語の視点は揺れ動き、「わたし」は山に落ちた飛行機乗りになっている。生と死の影が混ざり合う。
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