ゆとり教育を挙げるまでもなく、平成という時代は(表面的には)競争や対立を忌避してきた。その平成が終わった今、世の中はどうしてこんなにギスギスしているのか。
ある事故で意識を失ったままの智也と、彼を献身的に見舞う雄介の2人を軸に平成に育った男女の姿を描く。表面上は親しげに接しながら、言葉の端々でマウントを取り合う様が生々しい。
“死にがいを求めて生きているの” の続きを読む

読んだ本の記録。
ゆとり教育を挙げるまでもなく、平成という時代は(表面的には)競争や対立を忌避してきた。その平成が終わった今、世の中はどうしてこんなにギスギスしているのか。
ある事故で意識を失ったままの智也と、彼を献身的に見舞う雄介の2人を軸に平成に育った男女の姿を描く。表面上は親しげに接しながら、言葉の端々でマウントを取り合う様が生々しい。
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Colorado(コロラド)
今なお精力的な活動を続ける御大だが、もうクレイジー・ホースとの新譜は聴けないかもしれないと心配していた。前作の「Psychedelic Pill」が傑作だっただけに、ソロやプロミス・オブ・ザ・リアルとの新譜が発表される度に、少し寂しい思いがしていた。
“Colorado” の続きを読む
仕事が長続きしない夫と金融機関に勤める妻。婿養子として妻の実家に同居している夫を残して、妻は単身赴任で札幌に赴く。夫婦のすれ違いの物語だが、二人の感情を綴る筆は穏やかで、どこかチェーホフ的な喜劇のようでもある。
挫折も失敗も重ねながら、二人の関係は続いていく。岡山から北海道まで、旅行や転勤先の風景が二人の人生の背景を彩る。ロードノベルとしての魅力もある。
“夢も見ずに眠った。” の続きを読む
デビューしたものの、著作は絶版になった1冊だけという小説家が、大学で創作を教えることになり、学生との関係を通じて「書くこと」について向き合う。何のため/誰のために書くのか、学生たちとの関係が行き詰まる中で「わたし」は考える。同時に、自分の考えを学生たちに強いても良いものかと悩む。
フレイザーの「金枝篇」に書かれる王殺しのエピソードが、教師と生徒、書き手と読み手/未来の書き手の関係に重ねられる。著者自身も大学の文芸学部で教鞭をとっており、フィクションの中に私小説の雰囲気も漂う。
“藁の王” の続きを読む
著者の書く文章には、温かな諦念というようなまなざしが常に感じられる。諦念というとネガティブに聞こえるが、それは自分や他者の人生に対する肯定と一体となっている。
表題作は、五十歳の「私」が、幼い頃に通った公民館の図書室で出会った少年との思い出を振り返る。小学生の二人が交わす大阪弁の会話がほほ笑ましい。人類が滅亡した後にどうすれば生き残れるか。切なく、おかしく、どこか温かい記憶。
“図書室” の続きを読む
“conversation piece”。家族の肖像。
築50年の一軒家で妻、友人、猫たちと暮らす作家の日常が綴られる。庭や猫を眺めて、とりとめのない話をし、時々ベイスターズの試合を見に出かける。どこかに行き着くことのない思考と会話の豊饒さ。
“カンバセイション・ピース” の続きを読む
河合雅司「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」
「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること」
高齢化、人口減少が進む日本社会の今後の姿を、統計を元に時系列で予測する。
2024年には3人に1人が65歳以上となり、日本は本格的に高齢者の国になる。生産年齢人口は2015~2040年の25年間で約1750万人減少し、労働力不足も深刻化していく。2033年には全国の住宅の3戸に1戸が空き家になり、2040年には自治体の半数が消滅の危機に。都市部にいるとまだ危機感が薄いが、2025年には東京でも人口が減少し始め、2045年には都民の3人に1人が高齢者となる。輸血用血液や火葬場の不足も深刻化する。
現在1億2600万人いる総人口は2065年に8800万人まで減り、2.5人に1人が高齢者となる。そう言われてもこれまでは遠い未来の話のような気がしていたが、今の小学生は2065年時点でまだ50代で、今年生まれた子は46歳。彼らは限界集落化していく社会の中を生きなくてはならない。
“未来の年表” の続きを読む
正社員が減り、非正規労働者が増えたと言われる。だが、実際の統計では正社員の数は減っていない。総務省の労働力調査によれば、正規従業員の数は1984年に3333万人、2018年には3476万人。一方で非正規労働者は1984年の604万から、2018年に2120万と急増している。著者の指摘によれば、この30年あまりで実際に減ったのは正社員ではなく自営業や家族経営の零細企業で、雇用形態の変化というより、もっと大きな社会の変化が進んでいる。
日本社会がどのような歴史的経緯で今のような形になったのかを、終身雇用、年功賃金、新卒一括採用、定期人事異動、大部屋職場など、主に雇用形態の成立過程から説き明かす。働き方の仕組みは、社会保障や教育、個人のアイデンティティも規定しており、まさに日本社会のしくみといえる。高校生、大学一回生くらいの教科書にしたい一冊。
オーラル・ヒストリーである「生きて帰ってきた男」とあわせて読むと、戦後日本社会の実相がよく分かる。
“日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学” の続きを読む
SF界の新星として話題になっている著者の短編集。
表題作は、可能世界を自由に行き来することができるようになった人々が暮らす世界が舞台。並行世界や可能世界というと重厚なイメージが強いが、無数の「こうだったかもしれない世界」を飛び回る少女たちの青春を生き生きと描いている。
“なめらかな世界と、その敵” の続きを読む