資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐

マイケル・ハート、マルクス・ガブリエル、ポール・メイソン、斎藤幸平編「未来への大分岐」

富の偏在や利潤率の低下などで資本主義は限界を迎えつつあるが、人類はまだ次の社会のあり方を見出せていない。同時に、20世紀を通じて育まれた相対主義の弊害を克服する道筋も見つけられていない。

マイケル・ハート、マルクス・ガブリエル、ポール・メイソンの3人と、カール・マルクスの再解釈で高い評価を受けた気鋭の研究者の対話集。討論と言うより、それぞれの思想、問題意識をかみ砕いて説明するような内容で、議論に入りやすい。
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あなたの人生の物語

テッド・チャン「あなたの人生の物語」

寡作なSF作家、テッド・チャンの短編集。表題作など8編。ファンタジー的な「バビロンの塔」から、「アルジャーノンに花束を」を連想させる「理解」、差別の問題を扱った「顔の美醜について」まで、題材、趣向はさまざまだが、科学、言語、倫理、宗教などのもたらす世界観の相剋が物語の根底にある。
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小説の自由

保坂和志「小説の自由」

小説をどう書くか、小説をどう読むか、そもそも小説とは何か、という問いを巡る文章は古今東西繰り返し綴られてきた。著者の小説を読んだことがあれば、そもそも論旨明快な小説論を期待して本書を手に取ることはないだろうが、完成された評論というより思考の記録といったほうが近い。つまり、ひと言ではまとめられない。
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ドサ健ばくち地獄/新麻雀放浪記 申年生まれのフレンズ

阿佐田哲也「ドサ健ばくち地獄」
「新麻雀放浪記 申年生まれのフレンズ」

   

戦後を代表する大衆小説で、青春小説、ピカレスクロマンの金字塔「麻雀放浪記」。「ドサ健ばくち地獄」と「新麻雀放浪記」はその続編にあたり、時代は「麻雀放浪記」の数年後と十数年後。それぞれ、ドサ健を取り巻く人間模様と、40歳になった坊や哲が、若い“ヒヨッ子”の師匠になる話が綴られる。
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21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考

ユヴァル・ノア・ハラリ「21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考」

「自由」「宗教」「戦争」など、21のテーマをめぐる考察。本書で最も(というか唯一)印象に残ったのが、大衆の存在意義がなくなる時代が迫っているという指摘。「存在意義の喪失と戦うのは、搾取と戦うよりもはるかに難しい」と著者は書く。
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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

英国の公立学校に通う息子との日々をつづったエッセイ。

著者は英国の“最底辺保育所”で働いた経験を持つライター。イエローでホワイトでもある息子は、落ち着いたカトリックの小学校に通っていたが、あえてさまざまな社会階層の子が集まる“元底辺中学校”への進学を選ぶ。その学校生活を通じて、英国社会のさまざまな問題が浮き彫りになる。同時に、教育のおいて本当に必要なことは何かを考えさせられる。
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