「筒井康隆コレクション」(2014~17年)の刊行に合わせて行われたロングインタビューをまとめたもので、それほど期待せずに読み始めたら、これがめっぽう面白い。
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推し、燃ゆ
タイトルが秀逸。心酔するアイドルがファンを殴ったことで炎上する。現代的で軽やかな題材だが、身体性のある文章は大器を感じさせる。決してポップなだけの話ではない。
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幻坂
大阪には坂が少ない。現在の市街地の大半が沖積平野で起伏がほとんどない。そのぶん、上町台地との間に並ぶ天王寺七坂は、二つの世界を結びつけるような不思議な存在感がある。真言坂、源聖寺坂、口縄坂、愛染坂、清水坂、天神坂、逢坂、という名前もいい。
本書はその七坂を舞台にした連作短編集。本格ミステリのイメージの強い作家だが、本書でつづられるのは怪談。怖いというより、不思議で切ない話が多い。
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ハレルヤ
表題作と「十三夜のコインランドリー」「こことよそ」「生きる歓び」の4編を収録した短編集。
ある時期から猫の話ばかり書くようになった著者だが、この短編集も「こことよそ」以外は主に猫の話。ただ、そこにつづられているのは猫の物語ではなく、個々の猫の存在そのものであり、著者は猫を通して世界や生、死のことを考えている。
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愛の夢とか
著者らしい、さまざまな手触りの作品が収録された短編集。
「アイスクリーム熱」「愛の夢とか」「いちご畑が永遠につづいてゆくのだから」「日曜日はどこへ」「三月の毛糸」「お花畑自身」「十三月怪談」の7編。
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魯肉飯のさえずり
魯肉飯はロバプンと読む。「ルーローハン」ではなく、台湾語の響きをタイトルに冠した本作は、台湾ルーツの二人の女性――母と娘の物語。
この社会には「ふつう」という言葉のもとに“ささいな”抑圧が日常の隅々にまで満ちあふれている。
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ピエタとトランジ<完全版>
周囲で殺人事件を引き起こしてしまう不思議な体質を持つトランジと、その友人ピエタの物語。もともと短編として発表された作品の物語、世界を広げたもの。
トランジは天才的頭脳で事件を解決し、ピエタが彼女の活躍を記録する。いわゆる「探偵もの」の枠組みを取ってはいるが、ミステリーやサスペンスではない。バディ小説という宣伝文句通り、二人の友情が物語の核となる。
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愛されなくても別に
人は他者がいなくては生きていけないが、人間関係は呪縛でもある。家族、親子という関係は自分では選べないからこそ、祝福も呪いも色濃く表れる。
家族だから愛さなくてはならない、という呪いの言葉に本作は、愛されなくても別にいいじゃん、というシンプルだが力強いメッセージを突き付ける。そもそも、人と人が関係を築く上で愛は欠くべからざるものなのか(愛の定義にもよるけど)。
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ナポレオン狂
短編小説というよりショートショートという印象の、短くも切れ味鋭い13編。表題作は、ナポレオンゆかりの品のコレクターに、自分をナポレオンの生まれ変わりと信じている男を引き合わせる話。ブラックユーモアに富んだ一編。
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