童の神

今村翔吾「童の神」

タイトルの童は子供ではなく、まつろわぬ民のことを指す。鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥などの名で呼ばれ、京人(みやこびと)から恐れ、蔑まれた人々。彼らが手を携え、朝廷に立ち向かう。

朝廷による蝦夷征討が一種の侵略であるという理解は今では珍しくないが、著者は大江山の鬼退治伝説に注目し、京周辺の被征服民に光を当てる。
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紙の動物園

ケン・リュウ「紙の動物園」

さほどSFを読まない身からすると、SFと言われると、どうしても、科学、未来、宇宙、のような言葉が思い浮かぶ。そして、たまに手に取ると、その多彩さに驚かされる。サイエンスに想像力を働かせるだけでなく、サイエンスの制約から想像力を解き放ったフィクションもSFなのかもしれない。

本書は中国出身の米国人作家、ケン・リュウの日本オリジナル短編集。ベスト盤のようなものだから、面白くないわけがない。
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芝居小屋戦記 神戸三宮シアター・エートーの奇跡と軌跡

菱田信也「芝居小屋戦記 神戸三宮シアター・エートーの奇跡と軌跡」

2017年4月に神戸・三宮に誕生した小劇場「神戸三宮シアター・エートー」。新築4階建てで客席数100。楽屋、シャワー室、稽古に使える多目的室なども備えている。路地裏のコインパーキングが、演劇人の理想が詰まった小劇場に生まれ変わった。

神戸を拠点に劇作家・演出家として活躍し、同劇場の芸術監督に就任した著者が、劇場設立の経緯や運営の苦労をつづったドキュメント。劇場の運営経費や自主公演の収支、失敗談なども赤裸々に盛り込んでいる。
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